【養子縁組の有効性~節税目的】

配偶者が亡くなり、子のいない妹が、余命数か月と宣告されました。財産がどうなるか心配しており、兄である私に相続させたいというのですが、その旨の遺言を作成することでよいのでしょうか?妹の法定相続人は、兄以外のきょうだいがいるとのことでした。

遺言を残すのも一つです。弟や姉妹には遺留分はありません。

また、兄が養親となり、養子縁組するのも一つの方法です。

しかし、この兄には2人子供がおり、この2人の子供を養子にした方が相続税の点からは節税につながりそうです。

相続税の計算をする場合、基礎控除額、生命保険や死亡退職金の非課税限度額、相続税の総額の計算は法定相続人の数を基に行われます。

そして、法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、一定数に制限されていますが、被相続人に実子がいない場合は2人までとなっています。

親の相続のとき、他の弟や姉妹たちとの間で、いわゆる「争族」があったようで

介護をしてくれた兄の家系に相続してもらいたいというのが、妹さんの強い意思でした。

なお、兄が相続する例では、2回の相続が予定されますが、甥・姪と養子縁組をする方が1回分の相続となりますので、節税できそうです。

節税目的の養子縁組の有効性が問題になった事例がありましたが、判決では、『相続税の節税のために養子縁組をすることは、・・・節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは併存しうるものである。もっぱら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。』としました(最判平成29年1月31日)。

この本件事例のように、兄の家系に相続してほしいという妹さんの思いを考えると、節税目的があったとしても、それと養子縁組の意思とは別次元の話ということですね。

 以上