【配偶者短期居住権】 民法1037条

実家では両親が生活していましたが、先日、父が亡くなり母一人となりました。

以前は、兄夫婦と同居していたのですが、嫁姑の折り合いが悪く、兄夫婦は実家を出て行きました。父は兄が長男ということで、実家不動産を兄に譲るという遺言を残していました。いずれは実家に戻ってもらい、一緒に暮らしたいという期待があったのだと思います。父は病気判明後、短期間で亡くなりました。

母は、住み慣れた家からすぐに出ていかないといけないのでしょうか?

法律の改正で、配偶者の保護を図る制度ができたと聞きました。   

最低でも、6か月間は配偶者の居住権を保護するため配偶者短期居住権という権利が創設されました(1037条から1041条)。これは、①被相続人の配偶者であること、②相続開始の時に、被相続人が所有する建物(共有持分を有する場合を含む)に無償で居住していたことの他、一定の要件を満たせば、法律上当然に取得する権利です。2つの類型があります。

1号配偶者短期居住権は、居住建物について配偶者を含む共同相続人で遺産分割をすべき場合、2号配偶者短期居住権は、配偶者が居住建物について遺産分割の当事者とならない場合です。

 本件の場合、遺言で長男に相続させる(あるいは遺贈する)とされており、居住建物について共同相続人間で遺産分割をすべき場合ではありませんので、1号ではなく、「居住建物について遺産分割の当事者とならない場合」に当たり、2号の方の配偶者短期居住権を取得します。

1号は、遺産分割により居住建物の帰属が確定した日または相続開始の時から6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日までの期間、2号の場合は、居住建物取得者から配偶者短期居住権の消滅を申し入れた時から6か月を経過する日までの期間です。

無償で使用できますが、通常の必要費(固定資産税など)を負担する必要はあります。

この期間内に、お母さんの生活の基盤をどうするか準備する必要があります。

共同相続人全員が同意すれば、遺言と異なった内容での分割協議は可能ですので、兄夫婦と協議するのも一つの方法です。

家族問題は、どうしても感情的になってしまうと解決までに時間がかかります。

問題が顕在化する前に、争族の芽を摘んでいくことが良いようです。

視点を変えればどうなのかと、考える、感じることができる自分を作りたいものです。