【遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与】

母が亡くなりました。遺産がないので相続するものがありません。

10年以上前に父が亡くなり、全て母が相続したにも関わらず。。。。です。

母は、姉にだけ、父の遺産のほとんどをあげていたようで、母曰く、姉が母の近くに住み、母の老後の世話をするという約束をしていたからだそうです。

父が亡くなった時点で母も高齢であり、年金収入のみで生活している状況でした。

私は姉に何も請求できないのでしょうか?

遺留分侵害額請求ができないかの検討です。

平成30年相続法改正で、遺留分算定基礎財産に含める贈与の期間制限ができました。

第1044条 贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする。 (2項は略)

3 相続人に対する贈与についての第1項の規定の適用については、同項中「1年とあるのは「10年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは)養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る)」とする。

そうすると、原則は相続開始前10年以内の贈与(特別受益に当たることが必要)に限定されますが、例外的に『損害を加えることを知っていた』という場合、10年以上前の贈与でも、算入できる場合があります。

『当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した』とは、遺留分を害する認識があったかということですが、遺留分の請求者側が立証していく必要があります。検討要素としては。

①贈与時における贈与者の全財産に占める贈与財産の割合

②贈与時の贈与者の年齢や健康状態

③贈与後に贈与者の財産が増える可能性

上記①については贈与財産が全財産の2分の1より多い場合、上記②③は、将来にわたり、贈与者の財産が相続開始までの間に大きな増加がないという予見に関することです。そして、これら客観的な事実関係を贈与の時点で贈与者と受贈者の双方が認識していたか否かです。

本件では、母が高齢であって、年金収入のみということですから、その他に資産がなく、父の遺産のほとんどを母が相続し、そのまま姉に贈与していたこと、これらのことを母も姉も認識していたということであれば、例外的場合に該当し、遺留分の請求ができる可能性が高いと考えられます。