弟がなぜか、父の晩年の金銭管理をするようになり、施設の見学や入所の手続等をしていました。私は長男、会社員です。次男である弟は自由業、比較的時間があったのだと思います。
父の葬儀のときも、会場、葬儀の規模や段取り、費用のことなど、弟が全てを決め、喪主を務めました。費用は父の預金から出していました。
葬儀費用については、父の預金から出すことが当然のことなのでしょうか?
分割協議において、例えば、葬儀費用以外のところで熾烈な争いになった場合、翻って葬儀費用の点も争いになることがよくあります。
この点法律の規定はなく、確定的な見解はありません。
一般的には喪主が負担すべきであると考えられています。
葬儀費用は①死者の追悼儀式に要する費用と、②埋葬等の行為に要する費用(死体の検案に要する費用、死亡届に要する費用、死体の運搬に要する費用及び火葬に要する費用等)を指すところ、平成24年9月29日に名古屋高等裁判所判決では、①追悼儀式に要する費用については、儀式を主宰した者、すなわち、自己の責任と計算において、儀式を準備し、手配等して挙行した者が負担するとしています。追悼儀式を行うか否か、儀式の規模をどの程度にし、費用をかけるかについては、もっぱら儀式の主宰者がその責任において決定し、実施するものであるため、儀式を主宰する者(実質的な喪主)がその費用を負担するのが相当としています。一方で、②埋葬等の行為に要する費用については、祭祀を主宰すべき者(祭祀承継者)が負担するとしています。
よくある事例は、亡くなった直後に被相続人の口座から預金を引き出したり、保管していた現金から葬儀費用を支出し、分割協議の際に、経費として当然のごとく遺産総額から控除されるパターンです。
他の相続人から異論が出なければ、このまま進みます。
しかし、葬儀費用に関する争いについては、遺産分割の対象ではなく、相続人間で合意できない場合には、民事訴訟手続で解決する必要がでてきます。
相続人間の紛争を避けるために、葬儀の方法や内容、葬儀費用の負担方法等について、生前に決めておく、伝えておくことも大事かもしれません。
生前に、ご自身が葬儀に関する契約を締結し、互助会などに葬儀費用を積み立てる方法もありますよね。