【デジタル遺品】

個人事業主として仕事をしていた妹が先月、急逝しました。

私と弟が相続人です。少しずつ相続の手続を進めています。

遺品の整理をしようと思うのですが、パソコン等の電子機器のログインIDやパスワードが分からず、個人でHPを開設しブログ等もしており、どのように対処したらいいのでしょうか?

パソコンやスマートフォンなど電子機器に保存されたデータ、インターネット上のデータやアカウントなどのことをデジタル遺産、デジタル遺品と言います。

1 電子機器にアクセスできないと、そこに残されたデータやクラウド上のデータ(事業者のサーバー上も)にもアクセスできず、相続可能な遺産の存在もわかりません。また、放置すると以下のようなリスクがでてきます。

例えば、ネット上でFX取引を行なっていて、そのまま放置して損失が発生した場合、損失額は相続人が支払うことになります。

本人のブログが残っている場合、管理しないとアカウントが乗っ取られてしまい、悪質なサイトの入り口に利用されてしまう危険も出てきます。

本件のような電子機器へのログインIDやパスワードについては、専門業者に解析を依頼する方法もあるようですが、高額な上に、解析できないという場合もあり得ます。

自分で多数回トライするとロックがかかり初期化してしまってデータが消去するってこともあります。

そうすると、最低限必要な情報は信頼できる人に知らせておくこと等準備が必要です。

しかし、本件のように急逝された場合は、妹さんのことを思う気持ちからすると、高額でも専門の業者に依頼してみたいですね。

2 また、HPやブログの投稿等のクラウド上のデータについては、例えばクラウトストレージサービスの提供者やサーバ事業者の規約内容に従って、相続の可否(契約上の地位を承継するかどうか)が決まってきます。ですので、利用規約の確認やサービス提供者業者へ問い合わせをする必要があります。

3 本件では、妹の交友関係、仕事の状況など、急逝した方の葬儀の参列者の関係や仕事の引継ぎのこと等、相続人として知っておきたい情報をメールなどから詳しく知りたいところです。

この点、電子メールのデータは、メールサービス提供事業者のサーバ内に保管されています。利用規約によりますが、契約上の地位は一身専属的なものとして相続の対象にならないものと考えられます。電気通信事業法の「通信の秘密」の保護対象は、生きている者に限定されていないと解釈されていますので、事業者が本人の許可なく第三者に明かすことはないのでしょう。

本件では、妹が亡くなると、「葬儀の通知を出したいが、交友関係を知らない」「取引先とどのような仕事をしていたのか」等をメールで確認したいところですが、なかなか難しそうです。

メールをそのまま放置すると、無料の場合は、サービスの変更等で閉鎖となることもあり、有料の場合、支払がなければ、強制的に停止・削除になるでしょう。

4 さらに、SNSのアカウントについては、サービス利用規約において、アカウントの譲渡や相続による承継を禁止していることが多いでしょうから、一身専属的なものとして、契約上の地位は承継されないと思います。もっとも、相続人からのアカウントの削除要請に応じる事業者もあるようです。

相続人の立場からすると、解決できないことが多くありそうです。

生前から、これらの点を考えておくことも大切ですね。以上