【持戻し免除の意思表示の推定 改正相続法】

父が闘病の末に亡くなりました。相続人は、母と長男の兄、長女の私の3人です。

父は、自宅不動産を全て母に相続させる旨の遺言書を残していました。

他の遺産は預貯金です。

母が遺贈を受けた自宅不動産を、持戻して計算する必要がありますか?母の預貯金の取り分が少なくなり、生活が苦しくなるのではと思います。

 

高齢化が進む中、相続法の改正として、残された配偶者の生活に配慮したものが盛り込まれました。

その一つが、持戻し免除の意思表示の推定に関する規定です(民法903条4項)。

要件としては、①婚姻期間が20年以上の夫婦であること、②居住用不動産であること、③贈与または遺贈がされたことです。

これは意思の推定規定ですので、被相続人が異なる意思を表示(黙示でも)している場合には、適用はされません。

 

なお、この規定は、令和元年7月1日から施行されますので、施行日前にされた遺贈または贈与については、適用がされません。

父の意思が、妻(母)の老後の生活保障を目的として遺贈をしたものと考えられるとすると、持戻し免除の意思表示が認められる場合もあります。

このような場合は類型的に考えられますので、上記の改正相続法の適用がない場合であっても、個別具体的な事情によって持戻し免除の意思が認定がされることもあり得ます。   以上