【相続財産の範囲~代償財産】

母が亡くなり、その1年後、父も亡くなりました。長男である弟は、両親と同居していました。

父の亡くなる2週間ほど前から、弟は両親の看病疲れのせいか、体調を崩し、長期入院を余儀なくされました。

父の葬儀は、入院中の弟に替わり、姉である私が取り仕切しました。

弟から、家の鍵とキャッシュカードの場所を教えてもらい、葬儀費用はここから支払ってと。

数か月後にようやく、弟が家に戻ると、父の遺産である『金』が跡形もありません。

長女によると、家に置いておくのは危いので、葬式直後に売却してしまったというのです。

父の遺産分割協議でこの金のことはどのようになりますか?

遺産である金は、相続によって相続人である姉と弟の共有状態となります。

この共有物を弟の同意なく、勝手に処分したのですから、弟は、姉に対する損害賠償請求権を有しています。

遺産分割の対象となるのは、遺産分割時に存在する相続財産です。

長女に対する損害賠償請求権は、金の代償財産であって相続財産ではありませんから、原則として、分割の対象にはなりません。

もっとも、合意ができれば、不動産や預金等、他の遺産と調整して分割することが可能です。

では、弟の損害額はいくらでしょうか?

分割協議で解決するとの合意のある場合は、分割協議時でしょう。

あいにく、この数か月で金の相場が上昇し続け、売却時1グラム3400円だったものが、分割時には、1グラム3900円になっていました。

金が10キロあったとすると、5000グラム(弟の法定相続分)×3900円で、長女は1950万円の損害賠償請求をしなければならない可能性があります。

お姉さん、悪い時に売ってしまいました。以上