【相続人の廃除制度~夫婦の場合~その2】  

夫婦の場合、離婚すれば配偶者は推定相続人ではなくなります。そうすると、財産を残したくない場合、離婚すればいいのでは?

しかし、離婚したい気持ちはあるものの、相手から離婚を請求されたら、争いたくなる気持ちにもなります。背景事情はいろいろあると思います。

大阪高裁令和2年2月27日決定(遺言による廃除の事例)は、夫からの離婚請求を争っていたのと同時期に、遺言で夫の相続人廃除をいう場合の事例です。

 原審は、婚姻関係が破綻していたとは認められないとしつつ、一連の夫の行動が、妻に対する虐待及び重大な侮辱に当たるとして廃除を認めました。

 しかし、高裁は原審を取り消し、廃除申立を却下しました。

『・・・被相続人は、本件遺言において、夫から精神的、経済的虐待を受けたと主張し、具体的理由として、①離婚請求、②不当訴訟の提起、③刑事告訴、④取締役の不当解任、⑤婚姻費用の不払い及び⑥被相続人の放置の各事由を挙げる。

しかし、被相続人は、本件遺言時に係属中であった離婚訴訟において、婚姻を継続し難い重大な事由はないし、これが存在するとしても有責配偶者からの離婚請求であるか、婚姻の継続を相当と認めるべき事情があると主張して争ったうえ、本件遺言作成の後に言い渡された上記離婚訴訟の判決において、婚姻を継続し難い重大な事由(離婚原因)が認められないと判断された。

しかも、被相続人の遺産は、Dの株式など夫とともに営んでいた事業(D)を通じて形成されたものである。被相続人の挙げる上記①ないし⑥の各事由は、被相続人と夫との夫婦関係の不和が高じたものであるが、上記事業を巡る紛争に関連して生じており、約44年間に及ぶ婚姻期間のうちの5年余りの間に生じたものにすぎないのであり、被相続人の遺産形成への夫の寄与を考慮すれば、その遺留分を否定することが正当であると評価できる程度に重大なものということはできず、廃除事由には該当しない。』と。

 夫からの離婚請求を争わなかったら、元夫とは赤の他人ですから、遺産は夫に流れなかった。でも、夫の希望通りにはしたくなかったのでしょうね。絶対に!