【二次相続と相続登記~ひとりで遺産分割】

二次相続が発生して初めて遺産分割協議をし、相続登記の申請をするということがあります。例えば、父が亡くなり、10年以上経過して母が亡くなり、その段階で初めて、子ら相続人間で協議をし、父名義不動産の相続登記を申請するといった場合です。 

この場合、実体的には亡母も一旦不動産を法定相続しているはずで、その旨登記に反映させることが原則ですが、子らの遺産分割協議書を登記原因証書として、父名義から取得者への直接の登記、いわゆる中間省略登記が可能です。

本件の中間省略登記が可能とする理屈は、母の父を相続し遺産分割協議に参加する権利自体を子らが相続しており、母の立場でも協議に参加した結果(母も参加した扱い)成立した協議であって、そのことを子らの遺産分割協議書で形式的に審査できるということでしょう。

では、子が一人の場合、ひとりで遺産分割(協議)はできるでしょうか。

裁判例(東京高判H26.9.30登記却下処分取消等請求事件)がありました。

被相続人甲の相続人が乙及び丙の2人であり、被相続人甲の死亡に伴う第1次相続について遺産分割未了のまま乙が死亡し、乙の死亡に伴う第2次相続における相続人が丙のみである場合において、丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してした当該遺産に属する不動産に係る第1次相続を原因とする所有権移転登記申請については、被相続人甲の遺産は、第1次相続の開始時において、丙及び乙に遺産共有の状態で帰属し、その後、第2次相続の開始時において、その全てが丙に帰属したというべきであり、上記遺産分割決定書によって丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続したことを形式的に審査し得るものではないから、登記官が登記原因証明情報の提供がないとして不動産登記法25条9号に基づき上記申請を却下した決定は、適法である。』と。この判決中、「たしかに、上記認定事実によれば、従来の上記ア(イ)の登記実務は、・・・長年の間広く安定した実務であったこと、この取扱いの相違により登記申請者の負担にも大きな差が生じることが認められるから、この取扱いを変更するに当たっては、できる限り登記実務の混乱を避け、予測可能性を高める手立てを講ずることが望ましかったというべきである。」と。

そして、現在の実務では次の書類を整えればいいようです。

母死亡前の日付で、子が取得するとする遺産分割協議が成立していたのであれば、子がその旨の遺産分割協議証明書を作成し登記申請書に添付すれば、相続登記が可能である。そして、遺産分割協議証明書には、「申請人を除く他の相続人の」印鑑証明書の添付を要するところ、作成者である子は、母の身分を相続した者としての子の印鑑証明書の添付を要する。と。

登記所というのは、なかなか形式的なところです。申請において例えば「てにをは」が違ってもダメな役所という印象があります。

書面のみでの審査ですから、仕方ないのかもしれません。協議はひとりではできないのですね。