【民法改正で遺産分割の時間制限】 

 母が亡くなり、次いで父が亡くなり、相続人は子である姉妹2人です。遺産としては、父と母のそれぞれの預貯金と父名義の自宅不動産、賃貸している共同住宅です。自宅不動産には妹がそのまま居住し、共同住宅の賃料は妹が受け取っています。預貯金は姉妹で半分ずつにしましたが、父名義の不動産はそのままの状態です。

いつまでに相続の手続をしないといけませんか。

妹は両親からかなりの援助を受けており、「特別受益」があると思っていますし、妹の方は、私が両親のお世話をしたから「寄与分」を主張できるのだなどと言っています。

 民法上、遺産分割の期限は定められていませんので、被相続人が死亡してから何年たっても遺産分割自体はすることができます。

 もっとも、2023年度に施行予定の改正民法では、遺産分割ができる期間についての制限は設けませんでしたが、原則として、相続開始時から10年を経過した後の遺産分割には、民法903 条(特別受益)ないし904条の2(寄与分)の規定が適用されないこととなり、法定相続分又は指定相続分での遺産分割を行うこととなりました(改正民法904 条の3)。

合意で形成される具体的相続分であれば、必ずしも法定相続分に限られるわけではありません。

この改正法は、いつ開始した相続から適用されるのか。

改正法施行後に発生した相続だけではなく、施行前に開始した相続にも遡って適用されることがあります。ただし、特別受益と寄与分の主張は①相続開始の時から10年を経過する時または②改正法の施行の時から5年を経過する時のいずれか遅い時までとされていますので、改正法施行時に既に相続開始から10年が経過している場合でも、施行後5年を経過するまでは主張できることになります。

本件では、姉妹それぞれに主張がありますから、早めに協議を始めておくことがよいと思います。

また、相続登記に関しても注意が必要です。

2023年度にも施行予定です。→【改正不動産登記法】を参照ください。