【相続したくない不動産】

父の遺産の中に、地方の森林や原野がありました。相続人は母と長女の私です。

 相続してから既に半年が経過しており、父の預金について母が使用し始めています。母は地方にある自宅不動産に居住していますが、私は帰るつもりはなく、将来的には手放したい気持ちです。

 そして、この原野について、売却も難しいと言われており、私は相続したくありません。どうしたらいいでしょうか。 

 既に3か月の期限が過ぎていますので相続放棄はできません。

 相続したくない不動産も、毎年、固定資産税は発生しますし、土地上に建物がある場合、それが倒壊して誰かに損害を与えたり、土地上に不法投棄がなされると、場合によっては近隣住民の生命・財産にもかかわります。このような不動産の場合、売却がなかなか難しいですね。

 例えば相続人が他にもおり、他に遺産がある場合には、例えば森林等について、評価額を「0」とするのと引き換えに他の相続人に引き取ってもらうことも案の一つです。なお、このような負動産でも、趣味で買いたい人もいるようです。ただし、極めて低額のようですが。

 そこで、本件の場合、2023年度に施行予定の相続土地国庫帰属法という法律によって、次の相続の時には、この法律によって原野を手放すことのできる余地が出てきました。

 これには、一定の要件があり、法務大臣が審査します。また、負担金を納付する必要があります。 標準的な10年分の管理費用は、市街地の宅地(200㎡)で80万円程度、原野で20万円程度と予想されています。詳細は政令で規定予定

 承認申請は、相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得した者です。そして、土地が数人の共有に属する場合においては、承認申請は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができます。この場合において、相続等以外の原因により当該土地の共有持分の全部を取得した共有者であっても、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して承認申請を行うことができます。

この制度は、遅くとも令和5年度までには開始するということですが、いつの時点の相続にこの法律が適用されるか、この法律が施行された後に生じた相続に適用されるのは当然として、それ以前の相続にも適用があるかは、別途「政令」で定められる予定です。

 もっとも、上記の承認申請者の規定の仕方からすると、本件の場合、すなわち、制度施行前に父から相続して共有持分を持っている長女が、その後(制度施行後)に母が亡くなったとして、母の共有持分2分の1を相続した場合には、この制度の適用があり得ると考えます。

お母さんの相続を勝手に開始させてしまってすみません。