【限定承認か相続放棄か】  

1人暮らしの妹が亡くなりました。相続人は姉の私です。

妹は事業をしており、銀行や個人の方からの借金が残っていたようです。不動産のいくつかには担保が付いており、一つは実家です。

実家だけは残したい気持ちもありますが、他にも借金があるのではないか、その他の不動産がいくらで売れるのかもはっきりしません。やはり相続放棄をしておりた方がいいのでしょうか。

限定承認という制度があります。

これは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務および遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をするものです(民法922条)。

プラスの財産が多いのかマイナスの方が多いのかわからない場合、限定承認をすれば、プラスの財産の範囲内でのみ債務を弁済し、残った債務は弁済する必要がありません。

相続放棄するかどうか迷う場合とは、例えば、①相続財産である不動産がいくらで売れるか分からない場合、②判明している以外にも債務が出てくる可能性のある場合、あるいは、③債務超過は明らかだが特定の財産を残したい場合などです。

限定承認において弁済のため相続財産を売却するときは、限定承認者は競売に付さなければならないのが原則です。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部または一部の価額を弁済して、その競売を止めることができます(民法932条)。

先買権といいますが、これは鑑定人の鑑定価格以上の金額を支払うことにより、その相続財産を被相続人の債務の責任財産から解放し、その相続財産を相続人が取得する権利を認めたものです。

本件のように実家を残したいという場合など、鑑定価格以上の金額を支払い、競売を止めて、実家の所有権を確保することができるようになります。

限定承認は、プラスもマイナスも相続をしていることが前提です。