【母には父の遺産を渡したくない。】

父が、突然、亡くなりました。相続人は、兄と長女の私、それに母です。

母は、私たちが幼い頃家を出て行きましたが、父は離婚の手続きをしませんでした。

父の遺産は、預金だけ。父には借金もありました。

私としては、苦労して私の面倒を見てくれた歳の離れた兄に、少しでも多く相続してほしいと思っています。私の考えに沿う方法はありますか?遺言はありません。

まず、相続放棄という方法があります。これは、相続人が相続による包括承継(プラスもマイナスも引き継ぐこと)の効果を全面的に拒否する意思表示で、初めから相続人ではなかったという扱いです。これによると、借金を相続することもありません。

まず、法定相続分で考えると、母:1/2、兄:1/4、私:1/4となるところ、長女が相続放棄をすると、母:1/2、兄:1/2となります。借金も半分半分です。

でも、兄に、私の分の借金を相続させるのは申し訳ない、私は現在、兄のおかげもあって幸せで経済的にも不安はない。ということであれば。。。

相続分の放棄や相続分の譲渡という方法もあります。

相続分の放棄であれば、長女の4分の1の相続分が、母と兄の法定相続分の割合(2:1)で移動します。母は2/12(1/4×2/3)取り分が多くなり、兄は、1/12(1/4×1/3)多くなります。全体としては、母:2/3、兄:1/3という結果になります。一方、相続分の譲渡ですと、長女の1/4が、そのまま兄に移動しますので、取得分は相続放棄と同じ結果で、母:1/2、兄:1/2となります。

しかし、借金も、この割合で母と兄が承継することになります。もっとも、債権者との関係では長女が債務者であり、支払うことには問題ありませんし、債務引き受けという問題として、債権者の承諾が得られれば、債務を相続していないとの主張も通り、支払わずに済むことも可能です。

預金額や借金の額を比較し、母、兄それぞれの金額を検討してから、どの方法がよいかの選択をする必要がありますね。